ディジタル信号処理とは

 

 情報化社会といわれる現代、私たちは様々なハードウェアを利用し、またそれに組み込まれたソフトウェアを操作しています。パソコンをはじめ、携帯電話、テレビ、ゲーム機等、身の周りには様々なハードウェアあるいは電子機器が存在しますね。

 これらのハードウェアで記憶、保存できる情報には、個人情報などの様々なデータから、音声、画像、映像まで、多くのものが挙げられますが、全てに共通するのは、ハードウェアで計算処理できる形で「保存」されているということ。言い換えると、それらは全て「数値」として記憶されます。

これらの中でも、特に自然界において存在するエネルギーなどを、何らかの方法で数値化したものを、ディジタル信号と呼んでいます。自然界における代表的なものは、音や光、電圧、振動エネルギーなどであり、これらは電気信号あるいは電気波形に変換して、観測しまた処理することができます。

しかし、これらの信号あるいは波形を記憶するには、やはり数値化することが必要になります。また数値化しておくことで、これらの信号を「計算」によって処理することが可能になります。「ディジタル信号処理」とは、これらの数値化された信号、つまりディジタル信号を、「ある理論」によって構築された計算方法を用いて計算処理することです。

この「ある理論」は信号処理あるいは信号解析などと呼ばれ、信号を「周波数」という概念を用いて解析するものです。代表的なものに「フーリエ解析」や、周波数を主に扱う「フィルタ理論」と呼ばれるものがあります。しかしながらこれにおいて扱う信号は数値化されておらず、ディジタル信号を解析する上では都合が良くありません。

そこで、この理論をディジタル信号向けに発展させることが必要となります。その際に必要となるのがサンプリング定理であり、この成果より離散フーリエ変換やZ変換、ディジタルフィルタ、マルチレートシステムなどの、新たな解析方法が提案されるに至ったのです。

今日、ディジタル信号処理は様々な分野に応用されています。音声や顔画像などを用いた個人識別や、雑音などにより劣化した音声や画像の復元など、アイデア次第で様々な処理が可能です。そこには、「周波数」を扱う理論があり、またそれを元にした精密な「計算処理」が組み込まれています。このような意味で、ディジタル信号処理は信頼性および応用性が極めて高い技術であるといえるのです。